真鍋島赤にんにくとオリーブオイルについて

 アクを抜くために何日もゆっくり時間をかけるしょうゆ漬と違って、オリーブオイルを使うにんにく商品の場合は、僅か数分でアク抜きが完了します。アクが勝負であること、つまりアク抜きの加減によってにんにくの味が自在になることはしょうゆ漬と同じですが、沸騰した白ワインビネガーににんにくを浸す時間を5秒変えるだけでにんにくが全く違ったものになってしまった時には、さすがに驚きました。「勝負」は性根を入れてしなければならない、と改めて肚をくくりました。

 わたし達が真鍋島では作られていないオリーブオイルを使ってにんにくの加工品を作ることになったのには、物語と言ってもいいような出会いがあったからです。

 3年程前、島の友人に頼まれて生にんにくを売ったことがあります。それからしばらくしてある日、にんにくを栽培している山畑に行くと、その友人が見知らぬ外国人を3人連れてわたしのにんにく畑を見ていました。その中のひとりがスケンバリ・ルーチョ氏で、彼は蒜山でオリーブオイルを主としたシチリア島(イタリア)の農産加工物の販売をしていました。つれ合いが日本人だということもあって、流暢な日本語を話します。わたし達の生にんにくは彼に渡っていて、彼はいくらか興奮した面持ちで、「あれはすごくおいしいにんにくだった。あんなにおいしいにんにくは他所にはどこにもないよ。イタリアでも栽培できないかな」と言いました。そしてひとつだけでいいから、種をもらえないか、とも。彼は、本当にわたし達のにんにくに驚いていました。わたしも気をよくして、にんにくについて話し合いました。その時、彼がにんにくはオリーブオイルを使ってもおいしく食べられるよ、と言うので、作り方を教えてくれるかと言うと、ふたつ返事で「もちろん」と答えました。数ケ月後、今度はわたし達が蒜山へ行って、ルーチョ氏からにんにくのオリーブオイル漬とオリーブオイルペーストの作り方を教わりました。

 ひと通りの作り方は教わったのですが、「アクで勝負」するに当たって、どの味を自分達の商品の味にするか、という問題に直面しました。アクを加減した何種類かの商品を試供品として配って、多くの人から意見と感想を求めました。売行きの悪いわたし達の商品をイヤな顔もせずに気長に置いてくれている岡山高島屋の販売担当者は、にんにくの味を薄めて万人向きに作ったわたし達の試供品を試食して、「もっとにんにくの味を表に出した方がいいんじゃないの。どこよりも辛いにんにく商品を作ればいいのよ。頑固な人は、頑固を通せばいいのよ」と笑いながら言いました。

 わたし達が作るオリーブオイルを使ったにんにく商品の味は、わたし達が実際にそれを作る過程で、味見をして「おいしいな」と感じるものにしようと決めました。わたし達もにんにくのマニアです。

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